看板撤去と原状回復
今回は、看板の撤去取外しと賃貸ビル内の一室の原状回復のお話です。本日は晴れてよかったです。高所の作業のため雨天は中止となるからです。下の東急不動産さんに工事のご協力をいただいて、カラーコーンなどで安全確保を行い作業開始です。
ビルの2階までの作業では2連梯子を使用します。3連はさすがに危ないのでうちでは使いません。これ以上の高所作業は高所作業車が必要でしょう。このような看板撤去はよくいただく依頼の一つですが、中の物の処分と一式で頼むとコストダウンになりますね。まずは、ナットなどをはずして看板を撤去します。慎重に、慎重にそろりと下ろします。
次に金具など部材を取り外して、建物に付いた錆や汚れを研磨して落とし、壁にあいた穴をコーキング剤で埋めて看板撤去後の原状回復は終了。
次は、窓に貼り付けてあるカッティングシートの剥離作業です。このフィルム状のシートは粘着力が強く野外で長期間耐えられるように作られているためはがすのが厄介です。貼って時間が経過しますと紫外線や酸性雨によりフィルムが劣化してぼろぼろとなりいっぺんには剥がせないのでなを厄介になります。今回もご多分に漏れず特殊なヘラを使って少しづつ剥がす作業となりました。これは本当に根気の要る作業です。窓が外れないこのような場合、高所でおこなうのでよけい手間と時間がかかるわけです。
最後に室内のキャビネットやイス、複合機など大きなものと、紙類など不用となったゴミ一式を回収してトラックに積み込んでいきます。そしてポストや案内板のネームを除去すれば、賃貸ビルのフロアーと外回りの現状回復は終了です。
どこから見ても借りたときの物のない状況、要するに跡形のない状態に戻すことを、「原状回復」、「現状復帰」、「スケルトン戻し」などと呼ばれています。
注意してほしいのは、原状回復の意味です。日本語はむつかしいですが、原状回復の定義は、借りた時のままの状態にに戻すということではなく、現在ではガイドラインが設けられています。
以下国交省ガイドラインを参考までに抜粋しておきます。
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善良な管理者の注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」と定義しています。
借主の不注意による損耗は、当然、借主が修繕費を負担することになります。しかし、通常の使用による損耗や年数が経ったことによる自然損耗の修繕費用は月々の賃料に含まれているものであり、借主に原状回復義務はないとされています。
借主に修繕費を払う必要があると考えられる例としては
・引越し作業でついたキズ 不注意で雨が吹き込んだことなどによるフローリングの色落ち・キャスター付のイス等によるフローリングのキズやへこみ・壁の下地ボードの張替えが必要な程のクギ穴やネジ穴・ペットによる柱等のキズ・飲み物等をこぼしたことによるカーペットのシミやカビ・日常の手入れを怠ったことにより発生した壁や浴室等のカビ・使用後の手入れが悪くて取れなくなった台所の油汚れ
借主に修繕費を払う必要がないと考えられる例
・家具による床やカーペットのへこみ・日焼けによる畳やフローリング、壁の変色クリーニングで除去できる程度のタバコのヤニによる壁・天井の汚れテレビや冷蔵庫等の後ろの壁の黒ずみ・ハウスクリーニング・壁に貼ったカレンダーやポスター等の画鋲の穴・エアコン設置による壁の跡やビス穴・鍵の交換(ただし借主が鍵を破損や紛失した場合は借主側の負担)
契約書に修繕についての特約がある場合の考え方
契約書に、一般的な原状回復義務を超えた修繕義務を借主に負わせる旨の特約を設けている場合がありますが、ガイドラインでは、借主に特別な負担を課す特約の要件として下記の3つを挙げています。 1、特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること2、賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること3、賃借人が特約によって義務負担の意思表示をしていること
これらの要件を満たしていない場合、特約の内容は必ずしも有効とはいえないと考えられます(司法判断に委ねられることになります)。
要するに、元に無かったものを撤去した後、支払い修繕義務が発生する事項は、・不注意でつけてしまったキズ(ペットのつけた物は全て)。・カーペットのシミやカビ。・日常の手入れを怠ったことにより発生した壁や浴室等のカビ。・使用後の手入れが悪くて取れなくなった台所の油汚れ。の4点ということになるようです。それ以外の画鋲の穴や日常生活の汚れは必要なしと読み取れます。
これにより、賃借人は、クリーニング不用で返せるケースもあるようです。
お部屋ををお返しになるときも注意と交渉が必要な時代となっているようです。